勉強しないで勉強する方法【臨床共育】(33)

勉強しないで勉強する方法

ふと思ったのだが……もっと勉強が楽しくなる方法はないものだろうか。IAIRでは講義中に様々なワークを行う。もちろん技術研修なので、テクニックができるようになるものが中心。だが中には、自己紹介であったり、連想ゲームだったり、突然クイズを行ったりと、初めて参加する人が面食らうものもある。時には「ふざけないでください」と厳しい感想をいただくこともある。だが、ちがう、違うのだ。誤解させてしまったのなら組み立てに甘さがあった。それは事実として受け止めるが、本質はそこではない。脳は心地よい情報を求める記憶装置なのだ。今回はIAIRや齋藤の講義スタイルから脳と学習のメカニズムがリハビリに与える影響を考えてみよう。

 

なぜ、講義中に連想ゲームをするのか?

なぜ、講義中に連想ゲームや好きな食べ物を答えさせるのか? その理由の多くは精神科作業療法やSSTのセッションで得た経験からきている。冒頭で行うならアイスブレークでありながら、1日の講義の伏線として行うゲームを行い、訓練終了時に同じゲームを行うことで受講者の技術がレベルアップした実感をもってもらうことにある。この方法は既に学会等で認められ、精神科では毎日のように行われているものだ。

もちろん、齋藤が講義でやるからにはもっと壮大な伏線を準備している。必ず深イイ話で1日のまとめと実感が得られるように組み立てる。面白い、楽しいというだけでやっているワケではない。

 

勉強は心地よい方がはかどるのか?

では面白い、楽しいをしているだけでは、脳が心地よいと感じないというのか……そう思ったことだろう。実はその通りだ。面白い、楽しい”だけ”では意味がないのだ。先の「ふざけないでください」と意見をくれた方にとって勉強の場は「静か」、「まじめ」、「集中」、「尊敬」などの価値観を持っているのだろう。そういった状態の方が心地よいのだ。その視点で切り取れば、不快に感じたとも言えるし、不意の冗談、学会講演のなかでの笑いのような雰囲気の方が好みなのだろう。

そう、これは患者が生活指導をしても生活習慣を変えない理由と非常に似ている。いやむしろ同じだ。病気になる生活パターンの方が好ましいと脳に情報を送り続けてきた結果、病気になり、リハビリが必要になった。だが、リハビリは辛い、指導を受けた生活パターンは大変。不快感が先に来ることが多いのは、脳の快パターンにない状況に直面しているからなのだ。おそらく、生活指導も繰り返しと小さな階段をいくつも登る方法を取っていることだろう。その方法は正しい。正しいからこそ、脳にもう一つエッセンスを加えることが出来れば最高だ。そこはアルコール依存、タバコ依存などの依存症に学ぶ事が多い。が、紙面がいくらあっても足りなくなるので直接あった時や臨床共育TVにて話すとしよう。

 

勉強は物語のように

心理学者のユング曰く「物語は人生を導くガイドである」

勉強に限らず、漫画、小説、映画で語られる物語は、主人公の人生の物語りを切り取り、再編集されたものだ。先のユングの言葉にあるように、物語に触れた時、人は主人公や登場人物に共感、あるいは反発をする。なぜか? 人は常に自分の人生の記憶を反芻しながら物語に触れるからだ。例えば齋藤を例にすればBLUE GIANTで何度も泣けてしまう。宇宙兄弟然り。僕のヒーロアカデミア、NARUTO然りだ。全部漫画を出したのはさておいて、共通しているキーワードは「努力」と「継承」だ。努力は必ず報われる。そして想いを受け継がれていく事に感動を覚える。齋藤個人を動かす原動力でもある。このように、受講生、そして患者がどこで共感するのかはそれぞれだ。だからこそ、随所にエピソードが挟み込まれる。「お前の話はいいんだよ」と患者に言われるということは、話の方向性がズレているということだ。

 

勉強には感情を動かすことが重要

勉強には感情を動かすこと……感動が重要だ。

  1. 人は困らないと学ばない。(恐怖、危機感)
  2. 人は夢を持つと学ぶ。(喜び、あるいは怒り)
  3. 人は楽しいから学ぶ。(楽しみ、好奇心、愛)

はじめは受け身であっても、このプロセスを踏み、感動体験を繰り返していく。もちろんこれはリハビリをする理由と同義であることはいうまでもない。まずはこの3段階において、患者がどこにいるのかに気づくことだ。

 

まだまだ言い足りないが、これらを踏まえ、1日の講義の流れを作っているというわけだ。

もちろん、すべて脳と学習のメカニズムや、心理学。忘却曲線の先の理論を用いている。タイトルでは「勉強しないで勉強する方法」とは言ったが、日々是勉強であり、論語にて孔子も言っています。「子曰く、性、相い近し。習えば、相い遠し」簡単に言えば、人は生れついてからは大差ないが、その後の学び方によって差がつくということ。勉強しないで勉強する方法は無し。ただ毎日触れる物事から真摯に学ぶことなのだ。それこそが、勉強しないで勉強する状態なのかもしれない。


IAIR副会長 作業療法士 齋藤 信

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ABOUTこの記事をかいた人

Makoto Saito

作業療法塾塾長、臨床共育マネジメント主宰、IAIR副会長! 精神科作業療法士として13年臨床経験を重ねたのち、起業。臨床教育を共育にCHANGEするというビジョンのものと、療法士の育成に人生の全てを懸けている。 また、臨床共育メンター®養成として、臨床指導者や管理職向けの講義、コーチングも行っている。